撚りは「よ(り)」と読みます。「腕によりをかける」という慣用句でも使われるこの言葉、じつは糸が語源だってご存知でした? 綿から作られる最初の糸は原糸(生糸)とよばれます。このままだと繊維が細く扱いづらいため、束にしてねじり、強度を与えます。その工程を撚る(縒る)と言い、日常で私たちが目にする糸は撚りがかかったものなのです。
どれだけ撚るかで、生地の表情は大きく変化するそう。では同じ綿を使い強く撚った糸と、まったく撚っていない糸ではどれくらい違いが出るものなのでしょう? それを1枚の裏毛で表現したのがオカザキニットの「コットンスレイブ」です。
「前回のグレースウェットでは、裏を黄色のカラーループにして、アイキャッチで楽しい感じにしました。今回はその延長で、風合いで表と裏の差を出そうと考えました」と代表の岡崎さん。強撚糸を使うことで毛羽が抑えられたシャープな表面に対して、裏は無撚糸の特長である超ソフトな触感を実現。糸本来の風合いを感じてもらうため、表面加工は染めのみという徹底ぶりです。
糸の番手は一般的なスウェットに使われる太さですが、ゲージを通常の18から24へ上げることで度目を詰め、洗濯や摩擦による毛羽立ちが起きにくい組織になっています。
「日本の高い撚糸(ねんし)技術を見てもらうきっかけになれば」と岡崎さん。コットンと向き合い、綿だけでどんな表現ができるかを追求したコットンスレイブ。触ってその違いを確かめてみたら、あまりの心地良さと奥深さに綿の奴隷になってしまうことでしょう。