塩縮加工は、強アルカリ性の水溶液で生地を収縮させ、ペーパーライクな凹凸感や小皺を入れる手法です。本来、布帛(シャツなど伸びない織物)に行われる加工で、ニット(Tシャツなどで使われる伸縮性のある編み物)に行うのは不可能とされてきました。その常識を覆したのが「クラッシュ天竺」です。
きっかけは3代目の百間谷浩平さんが、カネマサ莫大小の入社以前に働いていた繊維商社時代へ遡ります。そこで、布帛の塩縮加工を目にした浩平さんは「カネマサのニットなら出来るかも」とインスピレーションを得ます。同社はハイゲージに特化した独創的なニッターで、塩縮の持つニュアンスをニットで出せたら表現の幅が更に広がる。そう考えて開発を始め約2年、史上初の塩縮加工を施した丸編みカットソーが誕生しました。
塩縮加工独特のシャリ感、肌触りはどう考えてもシャツ(織物)なのですが、手に取って引っ張ると伸縮性があって、あっと驚く感覚を味わいます。その独創性は、昨年、錚々たるデザイナーやブランドが集う世界最高峰の服地見本市プルミエール・ヴィジョンでも高く評価され一躍話題になったそう。ベースの生地はスーピマコットンの80番単糸という極細糸を46ゲージという超ハイゲージで編み上げた天竺編みで、本来は透け感を楽しむレディースの羽織などに使われるシアー素材。それに塩縮加工を施し、さらに2枚重ねにしてユニセックスな白Tへ落とし込みました。いろんな意味で固定観念を破壊した「クラッシュ天竺」。着心地もさらりと気持ちよく、見た目にも涼感があり、何より歴史的な一着を着る喜びを感じられるポケTです。